チーフ・サイエンティストのHarri Siitari氏によれば,「我々がトゥルクで活動を始めたのは2年半前で比較的浅い歴史しかない.しかしVTTは産業と大学の中間に位置しており,応用研究と実際の産業に関わる研究の両方を行っており,3分の1は国からのファンドで,3分の1がEUやTEKESからのファンド,残りの3分の1は企業からのファンドだ.その意味で,我々は大学・企業それぞれと非常に深いかかわりを持っている」と語る.
VTTは国立の技術研究所であり,オウルにおけるVTTエレクトロニクスの成功例から,VTTのブランチの誘致に各都市は大きな関心を持ってきた.
国内各地に点在するVTTの研究拠点は,例えばタンペレではバイオメディカルの研究が盛んであり,中でもインプラントなどのバイオマテリアルの研究が焦点となっている.タンペレには他にもエレクトロニクス部門やインダストリアルシステム,プロセス部門などがある.オウルにはエレクトロニクス部門の本拠がある.
これらに比べると,トゥルクのVTTバイオテクノロジーは規模としては非常に小さなものである.
オウルにおけるVTTの成功は地域経済の活性化の好例となっているが,VTTバイオテクノロジー(トゥルク)にとっての顧客はこの地域の企業が占める割合が高いのかという質問に対しては,「それほど多くない.我々の研究対象分野はグローバルにプレイヤーが存在している.フィンランドだけでなく,様々な国際企業がパートナーになっている」との回答を得ている.
また,「トゥルクにとってはVTTが来たことで他の地域のVTTが行っているプログラムの成果にアクセスするチャンネルが確保されたことが大きいだろう.例えばVTTが開発したソフトウェアプログラムや新素材をVTTを介してトゥルクの企業が使うことができる.VTTは各部門で何が行われているかを熟知しているが,地方の小企業はそのような情報を独自に,簡単に入手することはできない.VTTがその都市にあればVTTに尋ねればよいのだ.そういったネットワークや情報を提供するのもVTTの重要な任務だ」と述べており,現状では研究機関としてのプレゼンスよりも,VTTの研究資源へのアクセス窓口としての役割が大きいことようであった.氏が指摘するように,トゥルクにおけるVTTの歴史はまだ浅いため,VTTの地域産業振興におけるプレゼンスを評価するには時期尚早といえよう.