Biocis Pharmaは,医薬品開発会社である.同社は皮膚がんやアレルギーに有効な革新的な薬の開発を行っている.同社の戦略は多くのバイオテクノロジー企業と共通している.治療法の効果が第一段階で確認されるまで薬の開発を行い,確認されればそのライセンスを製薬会社に売るというものだ.
また,同社のビジネスモデルは,彼らの弁を借りれば,「非常にフレキシブル」だ.Biocis Pharmaはある意味バーチャルな企業であり,フィンランド国内の様々な企業や大学の研究室との非常に活発なネットワークがその主な資源となっているため,大規模な施設や人員は必要ではないとのことであった.
2003年,トゥルク大学の研究グループからのスピンオフ企業として生まれ,トゥルク・サイエンスパークのインキュベーター(バイオインキュベーター)にあり,オフィスや実験室スペースを持っているが,この場所のほかにもトゥルクサイエンスパーク内のビルや大学の実験室を使っている.
現在,5人のフルタイムの社員がいる.うち二人が実際の研究開発に携わっている.外部との協力という点では,フィンランド国内やヨーロッパ,アメリカの様々な研究機関やサービスプロバイダーと協力している.
インキュベーション施設にいることにどのような利点を感じるか?という質問に対しては,複数の利点があると感じているようであった.
第一にインキュベーション施設にある様々な施設が利用できることを上げている.会議室や事務設備,充実した実験設備といったものに加え,BioIncubatorで重要なのは共同実験室という設備だと述べている.全ての企業が利用することできるこの設備は大変質が高いと評価しているようだった.
また,第二にこのインキュベーターの中には様々な企業が集積しており.例えば既に退去してしまったが,この春まで臨床前動物実験のサービスを行う企業が入居していたため,大変有用なサービスプロバイダが隣接しているという環境は大変利便性が高いと感じているようだ.
また,大学との関係についてはどうか?スピンオフ企業であるとのことだが,日常的に大学とのコンタクトがあるのか?という問いに対しては,大学と大変深い協力関係にあるが,それには二つのレベルがあると説明している.
まずアカデミックなレベルであるが,大学の研究成果に直接的にお金を支払う必要は無いということを上げている.これは大学の研究者は研究成果を出版し,それによって給料をもらっているからだと指摘する.
もう一つのレベルは動物実験についてである.Biocis Pharmaは大学が行う動物実験サービスを購入している.動物実験は学術研究目的のみで行うにはコストが高くつきすぎるため,Biocis
Pharmaがそのようなサービスを「購入」するのだという.
同社が受けてきたファンドについてであるが,同社は数種類のファンドを受けてきた.まずTEKESのプレ・シーズファンディングを受けている.また,SITRAからも小額ではあるがファンディングを受けた.プレ・シーズファンディングはビジネスを実際に始めるには額が少なすぎるが,ビジネスプランを書いたり,評価を行うには十分な額だとのことであった.
2004年からは,さらにTEKESから大きな資金提供を受けた.また,いくつかのベンチャーキャピタルからも投資を受けている.またTEセンターからも小額のファンディングを受けている.
しかし,このような多様なファンドを受けてはいても,現在はフィンランドの国外に投資家を探している状態で,ベンチャーキャピタリストと2006年の春をめどに投資を開始してもらうべく,話し合いを詰めている状態であるとのことであった.
また,「通常,TEKESには50%のファンディングしか期待できない.もし我々がプロジェクトを持っていても50%までしか申請できないので,残りの半分は自前で用意する必要がある.確かに,額としては小さく見えるかもしれないが,BioCis
Pharmaのような小さい企業にとってはTEKESファンディングは大変重要なのだ」と述べている.
この点については,同社がサイエンスパークに期待することは何か?不満に思う点は無いのか?との問いに対する答えにも現れている.
すなわち,「一つは資金だろう.世界中全ての企業がより多くの資金を必要としているのは確かだ.しかし,BioCis
Pharmaのようなスタートして間もない企業が資金を獲得するのは大変難しい.だから我々がサイエンスパークに期待することの一つは,我々のような企業が資金を得やすいようによりいっそう充実したサポートをしてほしいということだ.
トゥルクサイエンスパークは昨年からそのような活動を開始している.この傾向を維持拡大して欲しいと感じている」という返答であった.