2008年4月4日金曜日

TAD(Turku Area Development)センターとPOTKURI

 まず,トゥルク地域の経済を概観するため,トゥルク市の機関であるTurku
Area Development
Centreでのインタビューを紹介する.同センターではトゥルク地域の開発センターとトゥルク地域の経済についてのインタビューを行った.

 そもそも,同地域はサービス業が盛んであり,その意味でフィンランド国内の他の都市とは色合いの異なる産業形態を持っている.

 これに加えてトゥルクは薬学が昔から強く,市政の関係で薬学とICTが押されているという背景がある.トゥルクはフィンランド南西部に位置する港町であり,古くから造船業が盛んであったが,ヴァルチラ社の工場がイタリアへの移転を決定したり同じ造船関係企業であるエーカー社の業績不振などのプレッシャーから,産業構造転換が進んでいるようであった.

 このような状況下でもトゥルク市は,Vision2010において海・造船・マリンテクノロジーを前面に打ち出しており,造船業やそれに関わる重金属系工業を維持していきたいようだ.

 しかし昨今の造船業が多いのでそれに関わるエンジニアがかなり多く失業している.ヴァルチラ社の工場移転が決定したのは2004年だが,40代~50代,つまり20年間エンジニアをしてきた人たちは仕事がなくなっても他にはいけない.20代~30台であれば学校に行きなおして,転職を考える人もいるのだが,40や50代をどうするかが問題になっているとのことであったが,このような高齢者雇用の問題はバイオを打ち出したからといって彼らを吸収できるわけではないだろう.

 トゥルク地域の現在の失業率は約8%程度であり,全国区で見ると比較的低いといえるが,これらの失業者の多くはエンジニアであり,リサーチャーではない.他の製造業という意味で携帯電話などへの進出も考えられたが,この分野では近郊都市であるサロに負けてしまう.そこで,サロ・トゥルクという一つの経済地域を作ろうという動きが出てきた.ヘルシンキとは別にサロ・トゥルクという経済地域を作って,サロと経済協力や技術開発の協力などが進められている.

 ここまでの各地でのインタビューでの発見として,日本との違いの一点が見えてきた.それは大学の修士・博士を中心に研究者として育成し,彼らがリサーチパークやサイエンスパークに所属していくという状態である.かつそれらの人々がスピンオフする場合もあり,その中に地域の産業も入ってくれば,それを機能させるためのナショナルプロジェクト,リージョンプロジェクト,ローカル企業のプロジェクトといった十重二十重のバックアップシステムがある.

 トゥルクに限らず,スピンアウト企業の起業者は,10分・5分で会社ができると強調する.企業をつくろうとすると法律的な手続きなどが発生してくるが,それをカバーする,ケアするサービスシステムがあるのだ.

 TADセンターでも法律的なことも含め,ここに一回くれば会社を始めるのに必要な情報は全てそろう.あとは書類にサインをすれば企業を始めることができるようになっている.

 また同じくトゥルクの地域機関であるPOTKURIでもインタビューを行った.POTKURIは日本で言うところのハローワークにあたる政府機関であるが,第三の役割として,起業家支援も行っている.POTKURIは現在,ICTとバイオ分野における雇用環境向上を目指すために,High
tech Wayと呼ばれるプロジェクトを行っている.

 現在はICTセクターやバイオセクターでは失業が発生するような労働力の過剰供給の状態であるが,将来的には,質の高い科学者への需要は拡大していくはずであるとの予測に基づいて如何にして専門的な能力を持った人材を確保するかという問題に取り組んでいるとのことであった.

 これらの分野においては労働力過剰の状態にあり,POTKURIは確かに現在は職業安定所としての役割が大きいが,本来のアイデアは,将来,企業が適切な人材を見つけることができないような状態が生まれるのを回避することであると述べている.これは,失業率は高い水準にあるのだが,企業は特定の(狭い分野の)専門家を確保したいと考えている場合が多いためで,このような専門家をどのようにしてトゥルクに呼び込むかというのが課題なのだという.

 しかし,海外からの企業誘致に伴うリクルート活動支援は事例としても少なく,あまり活発ではないという.

 そもそもフィンランドはアメリカのようにサラリーが高いわけではないので,それ以外にアトラクティブな「何か」を被雇用者(例えば外国籍の専門家)に提供する必要があると同時に,高等教育を受けていない人々に対しても仕事を与えていく必要があるのも事実だ.外国から多くの労働力を呼び込むことについては当然,議論も大きい.

 質の高い教育を受けたものでなければ仕事に就けない.しかし,外国から質の高い教育を受けた人を呼び込めば,その人が新たな仕事を創出できるだろう.失業率が高いのに外国人労働者に職を与えるという過渡的な情況が将来的には国内での労働への需要を高めるという難しい時期にあるといえる.